円虹吟行会  

     毎月の吟行会の紹介 

                   藤本たける記 

令和4年1月16日 神戸南京街の、湯気がいい

 震災忌の前日、初吟行会は神戸中華街あたりです。あたたかな日を得て幸先よい吟行日和とでもいうのでしょうか、18人の肉まん好きが集まりました。震災を偲ぶ句やあちこちに上がる湯気、饅頭などを詠んだ句が多かったのは当然でしょう、良い吟行句会となったのでした。

令和3年12月19日  布引ハーブ園

 風もなく太陽が燦々とふりそそぐなかを、ロープウェイのゴンドラにゆられて、そして徒歩で登ってきた人も、布引ハーブ園はクリスマスモードで迎えてくれました。たくさんの家族連れがきらきら輝く海を眺めていたりします。著ぶくれた12人の俳句仲間は、5ヵ月ぶりの吟行会を心ゆくまで楽しんだのでした。

令和3年7月18日  摩耶山天上寺

 女人高野摩耶山天上寺に行きました。1400年近く昔に開創された古刹です。静かで、そして清々しい祈りの場所でした。淡路島、明石大橋などが眼下に遥か小さく望めます。俳句の寺、俳句の山とも知られ蕪村、子規、碧梧桐なども句を詠んでいます。弘子先師の「浴びるほどとは峰寺の時鳥」の句碑にご挨拶しては吟行を楽しんだのでした。

 

 

令和3年6月20日  播磨の、刀(と)田山(ださん)鶴林寺

 前日までの雨もすっかり晴れ、さわやかな南風のながれる播磨・加古川の鶴林寺に行ってきました。聖徳太子の請願からはじまるこのお寺の歴史は古く、播磨の法隆寺とも呼ばれます。御本堂の前に沙羅の花が咲き、菩提樹の小さな実が風にゆれていました。国宝の本堂・太子堂のほかに重要文化財が18もあり、拝観に切りがありません。久しぶりの吟行と句会、嬉しく懐かしい15人だったのです。

令和3年3月14日  ヨドコウ迎賓館

 阪急芦屋川駅から春の日ざしをあびながら北へ5分も歩けば、ヨドコウ迎賓館にいたります。元山邑家の別邸だったこの建造物でいまは雛人形展が開かれていて、洋風の建屋の中は、雅な情感でいっぱいです。久しぶりの吟行句会が華やかにはじまりました。句会場は芦屋川の河口に近い、虚子記念文学館。22人の俳句仲間がなつかしそうに、投句そして選句をしたのでした。

令和2年12月20日 神戸三宮、北野坂あたり

 ことし最後の吟行会は、神戸です。おだやかな冬の日差しのなか、坂を上ったり波止場に出たりしては句をひろいます。心なしかクリスマスのデコレーションもBGMも控えめです。人の行き来も遠慮気味。それでもしっかりマスクをした俳句仲間が19人、通常の吟行句会の半分ほどでしたが元気に俳句作りをしたのでした。

令和2年9月20日 神戸市立王子動物園

 四連休のなかの動物園は、とても混んでいました。パンダが中国に帰ってしまうので、お別れをしようとい人も多かったのでしょう、入園するのに30分の列です。空は澄み

 

鰯雲が浮かんでいましたが少し残る暑さのなかを円虹の22人は、パンダのほか象河馬シマウマ麒麟オランウータン、そしてフラミンゴをはじめとする鳥類を観たり、楽しむ親子を眺めたりして句を拾っていたのでした。

7月19日 梅雨あけの箕面大滝へ

 やっと雨雲が晴れ、梅雨明けの光りがさしはじめた719日、ひと月ぶりの吟行会は箕面山で行われました。滝までは阪急箕面駅から2.8キロメートルの距離です。怒涛のような渓流ぞいに上る人、滝の上までタクシーで行き歩いて降りる人など、さまざまに、19名の誌友が滝の勢いに圧倒されたあと、出句場所までの緑陰をゆっくり楽しんだのでした。

令和2年6月20日  神戸・布引ハーブガーデン

 

 自粛がとかれた次の日、三か月ぶりに円虹の仲間にあいました。布引ハーブガーデンへで吟行です。名前をよびあい、うれしくほんの少し照れくさいような集まりでした。梅雨の晴間、すーっと静かに動くロープウェイをおりたらすぐのハーブ園は、驚くほどたくさんの花が咲き、いろいろの小鳥がさえずる山中の楽園のようでした。19人だけでしたが、みな晴れやかな顔をして句を拾っていたのです。

 

令和2年1月19日  明石城址、人丸神社、魚の棚

 

 ことしの初吟行は明石です。駅のすぐそばにある明石城。お濠にはおしどりの番いがなか睦まじくゆったりと日を浴びています。大漁旗が色あざやかにたくさん吊られている魚の棚。マンホールの蓋にもいかなごが描かれていました。万葉歌人・柿本人麻呂を祀る人丸神社など句材はつきません。会のあと明石名物の蛸焼をいただいたりして、32人の参加者は暖かく春近い吟行句会を楽しんだのでした。

 

12月15日 当麻寺、石光寺

 

 あおによし奈良二上山のふもとの当麻寺に行きました。中将姫が織ったと伝えられる曼荼羅図に見入ったあと、花の寺石光寺に足を運びました。寒牡丹を愛でようと、25人の句友は句帳を片手に寺園を行ったり来たり。藁苞におおわれた真っ赤な牡丹花をしげしげとうかがったのです。山茶花、千両、万両なども眺めては句づくりをしたのでした。

 

10月22、23日 鞍馬の火祭

 

 厳かであついあの火祭に行きました。鞍馬の火祭は毎年1022日に執り行われるのですが、今年は令和天皇の「即位の礼」と同じ日となりました。ありがたくもったいない一日となったのです。街道を練り歩く大松明を拝ませていただきながら、円虹の19人の句仲間はおいしい料理をいただき、今年酒をいただきながら、天下泰平と人々の幸福を祈願したのでした。夜中の12時まで続く祭りの明けた翌朝、あふれんばかりの余韻を胸に、句会にのぞんだのでした。

 

4月21日 河内の金剛寺

 

 聖武天皇の勅願で、行基さまが開創された由緒あるお寺に参りました。弘法大師もここで修行なさったそうで、この日はちょうど大師の御正忌。麗々しく法要が行われました。可愛いお稚児さんがお練に加わったりして境内は大賑わい。南朝の行在所でもあった天野山金剛寺は、国宝や重要文化財でいっぱいでした。31人の句友が、満開の八重桜の小径を心楽しく吟行したのでした。

 

3月17日  弘子前主催の墓参に

 

 山田弘子前円虹主宰の回向を手向けに、兵庫県生野に行ってきました。静かで豊かな山あいの町です。近くには生野銀山があって、かつての栄華がしのばれます。お寺のそばには俳優志村喬さんの生家があったり、漆喰の築地壁がおちこちに伸びていたり、情緒あふれる吟行地でした。ご霊前で手を合わせていると、鶯の鳴き声がしきりにとどきます。バス組の25人をはじめとして総勢48人もの吟行句会となりました。

 

2月10日 「春の集い」へ、神戸まで

 

 春節祭の神戸元町中華街の賑わいをみたあと、鯉川通りの坂道を登り切れば、「円虹春の集い」の会場・ラッセホールです。相楽園、北野坂もすぐそば。風は少し冷たいけれどいいお天気でした。「晴れ女」の呼び声高い佳乃主宰をはじめとして、90人もの句仲間が集い、春節祭の熱気に負けない句会を開いたのです。

 

1月27日  お染久松の、野崎観音

 

 平成31年、初吟行は人形浄瑠璃でよく知られた野崎参りをしてきました。大阪の東端、生駒山地の山懐に抱かれた曹洞宗のお寺です。さすがに大寒を前に参拝する人もまばらでしたが、われらが円虹の句友は熱心です。著ぶくれて重い身体にもめげず、170段もある坂をのぼり切りました。安産祈願、良縁祈願の御札を見上げ、お染久松の塚に手を合わせては句を詠む25人だったのです。

 

12月13日 売布黙想の家と売布神社

 

  佳乃主宰の俳句教室「たおやか俳句」で、課外授業の吟行会をいたしました。阪急電車売布駅のすぐそば、カソリック修道院の『黙想の家』と売布神社。神さまに十字を切ったり手を合わせたり、ありがたい吟行会でした。シスターの美味しく優しい手料理をいただいたあと、来年の幸せと名吟を願った15人だったのです。

 

12月9日  大根焚の、了徳寺

 

 無病息災を祈願して、大根をいただきに京都・了徳寺に行ってきました。割烹着を身に着けたご婦人がたの働きぶりに感謝しながら大根焚をあとに、近くの仁和寺へ。372年目の初お披露目となった不動明王のご尊像を拝観できて、心まで息災になったようでした。仁和寺の閑静な広い境内には、ミツバツツジの帰り花が咲いていたりして、句材が尽きません。25人の句友が寒さのなか、身も心も暖たかくして句会にのぞんだのでした。

 

 

 

7月15日   神戸どうぶつ王国へ……

 

 真夏日のさなか、モノレールに乗ってポートアイランドに渡りました。終点空港の一つ手前の駅を出てすぐにひろがる、どうぶつ王国への吟行です。ケモノもいいし熱帯の花もすてき。鍬形や甲虫、それから小さな魚。おさない子らは目をキラキラさせて、食い入るように眺めます。お父さんはその後ろ姿を撮影です。駱駝の背にまたがったりポニーに乗ったり、子供にとっては王国じゃなく、天国のようでした。童心に戻れた30人の俳人が、暑さを忘れて涼しい会場で句会を持ったのでした。

 

6月5日~7日  隠岐へ、伝統の祭と海の青

 

 隠岐へ行ってきました。隠岐島後(おきとうご)三大祭の一つ『御霊風流(ごれえふりゅう)』を見せていただき、雄大そして優美な島の景色を観るために。それにもちろん俳句大会に出句するためにです。19回目となる『隠岐後鳥羽院俳句大会』には、石寒太、宇多喜代子両先生そして円虹の佳乃主宰が居並ぶという、豪華な選者陣でした。夜の懇親会には町長も参加して、海の幸、山の幸を食べ切れないほどいただくバーベキュー。島の魚、隠岐の牛肉、隠岐の酒、おいしかったなあ! またかならず来よう、という声がしきりの吟行会となったのでした。

 

5月13日  丹波の柏原、俳句ラリーへ。雨の中……

 

 毎年恒例の「田ステ女 俳句ラリー」に行ってまいりました。第22回目となるこの日はあいにく朝から大雨、それでも100人近くの俳人が参集いたしました。わが円虹の仲間は、主宰をはじめ元気に投句をしたのでした。雨の柏原もまた、シャレていました。

 

4月15日  しずかに雨ふる、西の京

 

 春の雨がしずかな奈良西の京へ、薬師寺・唐招提寺の拝観に行ってきました。少し寒い西の京はさすがに人が少なく、ゆっくりじっくり吟行することができました。八重桜、ハナミズキ、藤の花そして牡丹。参道も境内も、春を惜しむ花々が豪奢でありました。34人もの熱心な俳人が、句会を楽しんだのです。 〆

 

3月25日 辛夷と桜、陽をうけて…

  「円虹春の集い」が行われました。波止場から坂を上り、白木蓮・辛夷そして桜を見上げながら会場のラッセホールへ集合。100人の句仲間が、例年より早めの春を満喫したのです。会場すぐそばの相楽園も穏やかに陽があふれて、名代の蘇鉄もキラキラ輝いています。句会は熱気に包まれたものとなり、まさに相楽しむ園となったのです。

 

2月3日 壬生寺で節分会

 

 底冷えの京都です。壬生寺で厄落としをして狂言を見、新選組屯所跡で幕末の剣劇話を聞いてきました。遠く須賀神社から懸想文を買ってきた人たちもいて、会場は思い出の報告会のようでもありました。28人の仲間たちが、さまざまな思い出を句にして短冊にしたためたのです。

 

1月21日  東寺へ、掘り出し物を……

 

 平成30年の初吟行は、世界遺産・真言宗総本山の東寺へ行きました。「初弘法」の骨董市です。日曜日と重なったためでしょう、大変な人出。細くなっている回遊路は、欧米系・アジア系の人々で身動きとれないほどです。みんなきっと、「なにか掘り出し物」を探していたんでしょうね。総勢39人もの盛会で、円虹の幸先よい初吟行句会となりました。

 

はじめに                  藤本 たける

 

新しいシリーズがはじまります。俳人にとって、そして俳句結社に加わっている者にとってはとても楽しくうれしい吟行俳句会。勉強になるし句力(って言葉があれば)をみがくいい機会です。たいていは草枕、つまり和歌や俳句によまれてきた名所、そして伝統的行事をうかがいにゆきます。そこで見た季節の風物を五七五にまとめ、同行の句友の作品との視点の違い、感動の違いを確かめ合うのです。心がはずみますし、豊かになってゆきます。日本の四季と伝統の美しさを目の当たりして俳句という文芸に仕上げる、ありがたい催しです。

   円虹では原則的には、月に一度この吟行句会を行います。たとえば今年は、

 

1月 / 京都三十三間堂の弓始 、 

     ほか京の初春

 

2月 / 前主宰をしのぶ会(神戸元

     町あたり)  

 

3月 / 近江舞子の比良八講

4月 / 奈良春日大社、奈良町あたり

 

5月 / 兵庫県柏原(かいばら)俳句ラリーに合流

 

6月 / 京都、鞍馬寺の竹伐会

 

7月 / 一泊で、小豆島の虫送り

というような具合です。平均三十人くらいの円虹の誌友と素敵な時間をすごしてきました。来月八月は暑中休暇ですが、秋からの吟行会の景色を御案内いたしますので、どうぞご期待くださいますように。